中村宏の絵のセーラー服の少女は怖い
中村宏という画家はご存知だろうか。私の印象では60年代、現代思潮社、観光芸術、ルポルタージュ絵画などのキーワードがある。機関車や女学生などが絵画のうえで執拗に登場する。シュールレアリズムという範疇なのだろうが、御本人は「観念絵画」と語っている。
ところで彼のインタビュー(『応答せよ! 絵画者 中村宏インタビュー』中村宏 、嶋田美子 白順社 2021年)を読んでわかったのは何故怖い顔のセーラー服の女学生が出てくるのかといえば、幼小体験にあった。戦争中に動員で多くの女学生たちが工場などで徴用されていた。それが脳裏にあるらしい。また、セーラー服自体も水兵の服から派生したもので、軍服なのである。それが怖いらしいし、絵の中で恐ろしげにも描かれている。

似而非機械(1971年 油彩 練馬区立美術館より)
似而非機械