足立元の「アナキズム美術史」

『アナキズム美術史』(足立元 平凡社 2023年)が出た。タイトルに惹かれたが、これは結びにあるように『前衛の遺伝子 アナキズムから戦後美術へ』(ブリュッケ 2012年)を再構成したもので、どの程度加筆・変更されているのか比較していないので判然としないのだが、本文で著者が10章と11章を加えたとあるので、基本ふたつの章を加えたものと理解していいのだろう。

どうやらブリュッケという版元がなくなったらしい。詳しいことは以下リンクを貼っておくので興味のある方は検索してほしい。

http://www.nadiff.com/?p=15756

本人も書いているようにアナキズムの美術ではなく、画家が社会的なものを志向するものをアナキズムと結びつけて論じている。アナキズムについてはさほど深い洞察があるわけではないので、普通に日本の前衛美術史として読んだほうがいいだろう。

気になるのは戦後美術の運動などの記述が1950年代で終わっており、その後の動向が考察されていない。ちょうど60年代は政治の時代であり、70年には大阪万博で言論・表現活動も盛り上がったときだっただけに、それがないのはやや肩透かしを食った感じだ。

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足立元

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